工場案内をしたら材木屋なのに段ボールを譲ってくれとお願いされた話
とても嬉しい出来事があったのでお伝えさせてください。
私たち西粟倉・森の学校は木材加工を生業にする会社ですが、モノづくりへの気持ちは段ボール1枚を通してお客さんに伝わることもあるんだなと嬉しくなったのでした。
年間600人以上が工場見学に足を運びます
仕事柄、会社の工場をお客さんにご案内することが多くあります。
村にはコンビニはないし、信号は2つしかありません。ドがつく田舎です。けれど、年間600名以上の方々が全国からわざわざ足を運び工場を見学してくださいます。
つい先日も宮崎県からいらっしゃったお客さん十数名に、会社の取り組みや工場案内をさせていただいたのでした。
「この丸太は1本いくらだと思いますか?」
「あの工程は何をやっていると思いますか?」
工場を案内する中でお客さんに質問を投げかけることがあります。
わざわざ田舎の小さな工場に足を運んでくださったお客さんに少しでも多く木のことを知ってほしいから。
「こんなに手間のかかる作業だなんて知らなかったので勉強になりました」
「実際につくっている現場を見せてもらえたので安心して使えます」
と嬉しいコメントをいただけることも多いので、話しているうちにテンションも上がってしまいます。
そして、ついつい話し過ぎて時間オーバー。お客さんのスケジュールを遅らせる常習犯でございます(すいません!)。
手を動かし汗を流すつくり手の顔が見える工場です
西粟倉・森の学校はまだまだ小さな会社なので、かっこいいショールームはありません。
けれど、山々に囲まれた工場で、森から伐り出された丸太を使い、1枚1枚のフローリングを製造するモノづくりの現場があります。
手を動かし汗を流すつくり手の顔を見ることのできる場所です。
森づくりの背景から、顔が見えるモノづくりまで、距離をぎゅっと縮めてお客さんに伝えることができるのは小さな規模感だからこそ。
日本の森と人の暮らしの距離を縮めることが私たちの役割だと(勝手に)思っています。
工場見学中に段ボールが欲しいとせがむお客さん
「ねえねえ、おにいさん、この段ボール一枚もらっていいかしら?」
今日、工場をご案内したお客さんからこんな相談をいただきました。
えっ!木じゃなくて段ボールを、ですか?!
実は最近、製品パッケージのリニューアルをしました。
多くの製品は段ボールで梱包されていますが、芸大出身スタッフがパッケージを1からデザインしてくれたんです。
山で木を植える様子、チェンソーで伐採する様子、丸太が積み重なる様子、フォークリフトで丸太を運ぶ様子、工場で製品をつくる様子、お客さんが床を貼る様子……をイラストで段ボール5面にわたって描いてあるのです。
実はすべて現場スタッフの似顔絵になっているんですよ。
フォークリフトに乗っているのはシミズくん、木材をカットしてるのはカネダさん、イワモトさんが梱包して……といった感じ。
私たちなりの小さな遊び心です。
梱包用段ボールにもモノづくりの思いは込められる
スギやヒノキって(ほぼ)日本全国どこでも生えています。
西粟倉村は産地としてブランドがあるわけではありません。
大量生産する規模ではないので価格もあまり安くはつくれません。
だけど、50-60年前にこの辺りの山に植えられた木があって、世代を越えた手がかかって時間をかけて育った木がある。
この小さな村で、山々に囲まれたこの工場で、ここにいるスタッフたちが一枚一枚の製品をつくっている。
その時間軸、雰囲気や空気感を少しでも知ってもらいたいね、とパッケージデザインにも取り入れてみたのでした。
そんな話を工場案内でさせてもらったところ、「ねえねえ、おにいさん、この段ボール一枚もらっていいかしら?」 という相談をいただくことになったのでした。どうぞどうぞ!
「梱包するだけの段ボールにもストーリーがあるなんて素敵だわ」
そのお客さんは今から宮崎に帰るというのに小脇に大きな段ボールを抱えてバスに乗り込んだのでした。それもニコニコと笑顔で。
パッケージデザインをしてくれたスタッフも、パッケージに登場する現場スタッフもこの話を聞いて喜んでくれたのでした。
そして、なにより照れるスタッフたちにこれみよがしに話し込んでいる自分自身が嬉しかったりするものです。
梱包のための段ボール1枚にだって思いは込められるんです。