ヒノキの内壁・外壁を縦張りですっきり魅せる 築130年の古民家リノベーション

岡山県総社市の旧清音村に、築130年の古民家をリノベーションした住宅が完成しました。

建物は明治時代に移築され、ご家族により代々引き継がれ大切に使われていた古民家です。

大黒柱や太い丸太梁など昔ながらの威厳ある要素を保ちつつ、現代の暮らしに合わせた5つの個室空間が特徴的です。

古いものと新しいものが融合した明るく開放感のある住居になっているだけではなく、古民家リノベーションの問題となりやすい気密・断熱性間取り問題に解決にもアプローチした古民家リノベーションの良事例です。

大黒柱や丸太梁は残しつつ現代の暮らしに合わせた間取り変更

数年前に葺き替えられた瓦屋根を残すという条件の中、その下に5つの箱(=個室)を挿入しています。

個室以外の空間をパブリックスペースと捉えることで、居住の快適性を確保する建物の趣を残す立地を生かす構造補強を施す、の4点の要件を満たすよう設計されています。

プライベートな空間と構造補強を兼ねた5つの箱には、個室水廻り納戸の機能があり、動線よく配置することで、共働き子育て世代のクライアントの要望を叶えています。

お子さんが大きく育ってからも個室を用意できる点が良いですね。

また、個室には断熱性の高いペアサッシを採用し気密性を高め、それぞれで効率の良い空調管理ができるようにしています。

古民家をリノベーションした住宅に対する憧れを抱く人は多いですが、気密・断熱性の低さが障害となりやすいのも事実です。

今回の事例では、古民家の構造はそのままに、中に気密性の高い小箱(=個室)を用意することで古民家の弱点を解決しています。

ヒノキの内壁・外壁を縦張りですっきりと魅せる

今回の事例では、内壁・外壁に使われたヒノキの壁材を納品させていただきました。

ヒノキの12mm厚、働き巾100mm、長さ3Mの本実加工の製品ですが、施工場所によって等級を変えた点が特徴だと言えます。

  • 内壁 ヒノキ・節あり … 古民家に合う自然素材らしい表情をみせる
  • 外壁 ヒノキ・節なし … 節のないものですっきりみせ、劣化しにくいようにする

内壁には節のあるもの、外壁には節のないものを施工しました。

気温差が激しく雨に濡れることも多い屋外施工の場合、膨張・収縮を繰り返して節処理(パテ埋めや埋め木の処理跡)が割れたり抜けたりする場合もあります。

そのため、外壁は節の少ないものがおすすめです。

ある程度の硬さがあり、油分が多く水に強いヒノキを外壁材として選んでいる点も見逃せません。

いずれも横張りではなく縦張りで施工することですっきりと魅せています。

縦張りの場合は上下に目線が動くので、古民家らしい吹き抜けの天井が映えますね。

木の色味に合わせて設備や家具を選び、雰囲気を統一する

ダイニングキッチンの上部、元々あった厨子二階の床を取り除き、既存の梁が見える吹抜け天井になっており、古い建物の雰囲気を全体に表せるようデザインされています。

木の色味に合わせて設備や家具の色味を選んでいるので非常に統一感があり引き締まった空間に仕上がっています。

床や壁に無垢材にすると木々(モクモク)した空間になりがちなので、木に合わせて設備や家具の色味や素材感を絞るというのはグッドアイデアですね。

スクラップ&ビルドにはない、あるものを活かす難しさと面白さ

実際に施工中の現場を伺ったのですが、古民家の構造や雰囲気を活かしながら新たな命を吹き込んでいくプロセスはとても複雑で繊細な印象を受けました。

古民家の現状を把握しながら、現代の住まい手に快適な住宅を設計する。そして、計画や設計図どおりにいかない場合も、現場でコミュニケーションをとりながら臨機応変に対応していく。

単なるスクラップ&ビルドにはないあるものを活かすことの難しさと面白さを体現しているようでした。

築130年の伝統的日本家屋のフルリノベーションに材木屋として関わらせていただいたことを嬉しく思います。

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