甘くて美味しいいちごを栽培するための3要素「光・温度・水」

日々、いちごの顔色と環境データ(温度や湿度、二酸化炭素濃度など)とにらめっこしています。

今回は甘くて美味しいいちごのつくり方をご紹介します。

美味しい=甘い=糖度が高いいちご

まず、どんないちごが美味しいいちごでしょうか?

甘さ?酸味?形?それとも食感?

人それぞれ好みはあるかとは思いますが、ここでは分かりやすくするため、美味しいいちご=甘いいちご=糖度が高いいちごと仮定します。

糖度を高めるには?

糖度が高い=甘いいちごを栽培するにはいくつか方法がありますが今回は3つの要素を紹介します。

  1. 光合成量を増やす
  2. 温度を低く管理する
  3. 水分率を適切にする

光合成量を増やす

みなさん、突然ですが、ここで問題です。

光合成に必要な3要素は何でしょうか?

小学校で習う内容ですが「あれっ?3つもあったっけ?」という方いらっしゃるのではないでしょうか。

答えは…

  1. 二酸化炭素

この3つです。

ちなみに、発芽に必要な条件は、温度・水・酸素の3つです。

光合成を簡単な式で示すと以下の通りです。

 ↓光
水 + 二酸化炭素 → 糖(光合成同化物)

水と二酸化炭素が光エネルギーを受けて糖をつくる、ということですね。

光合成の絶対量を増やせば糖の生産量が多くなり、甘くて大きいいちごをつくることができます。

ここで、どうやって「どうやって光合成量増やすねん!!」と思った方もいるかもしれません。

極端な話をすれば水と二酸化炭素をたくさんあげてお日様をしっかり当てれば光合成の量は増えていきます

例えば、以下のような方法が当てはまります。

  • 光合成量を増やすために、与えた水の量から吸い残した水の量を差し引きしながら水の量を決める。
  • 二酸化炭素の濃度を測定しながら、二酸化炭素を施与する。
  • 光が入りやすいようなハウス構造や被覆のものを選ぶ。

西粟倉・森の学校では、地道な工夫を積み重ねながらいちごを栽培しています。

温度を下げる

2つ目は温度を下げて管理をすることです。

みなさん、いちごが美味しい時期がいつ頃かご存知ですか?

・暖かくなってくる春?
・光が大事って言ってたし夏?
・それともクリスマスシーズン?

よくスーパーマーケットでいちごを買っている人は御存知かと思いますが、答えは、1月~2月です。

低温条件下でいちごは美味しくなるのですが、それは着色速度に対する光合成の量が多くなるからです。

いちごの色づくスピードは、果実付近の温度に比例します。

一般に、いちごの花が咲いてから、収穫までは500℃・日とされています。

1日のハウス内の平均気温を15℃で管理すると500(℃・日)/15℃=33日と、1か月程度となります。

冬場は、日照時間が短くなりハウス内の日平均気温を下げて管理することも多くなるため、この日数よりも長くなります。

収穫までの日数が長くなる分、糖を蓄えられる期間が長くなり甘くなるという理屈です。

また、酸度は日数がたてば徐々に抜けていくため、酸味が少ないため、甘みを感じやすくなるということも原因の1つとして考えられます。

「冬場は光が少ないから光合成量少ないんじゃないの?」と思われた方いらっしゃるかと思います。

いちごは、トマトやキュウリなどの他の果菜類と比較して、群落が低く、光飽和点が小さいため、光の制限要因がかかりづらいのです。

もう少し簡単に言えば、背丈が低いため、光の必要量が他の作物と比べて少なくて済むといニュアンスでしょうか。

そのため春先以降、光がたくさんある時期であっても必要以上の光となるため光合成は頭打ちになってしまいます。

逆に温度が高くなるため、着色速度が速くなり、酸味が強いいちごになっていくという訳です。

水分率を適切にする

3つ目は適切な水分率管理をすることです。

いちごをはじめ果菜類はその重さの90%以上は水分でできています。

糖の絶対量が同じだとしても水分量が1%でも下がれば糖の割合は大きく増加することになり、これは甘さを感じやすくなります。逆に水分率が高いと、水っぽく味がないように感じます。

光合成に大事なのは、水だと言いましたが、品質の維持のためには適切な水分率管理をすることが美味しいいちごをつくるうえで重要になります。

具体的には、植物が吸っている量を把握し、必要量をしっかりと上げることが大事になってきます。

ひと昔前まで「水やり10年」(農業での水やりを体得するまでにかかる年月は10年かかるという意味)と言われていました。

それほどにも水やりは大切であるという先祖代々の教えではあり、重要な要素ではありますが、いちご栽培1年目の私でも、吸っている量を元におおよその潅水量を決めれば70点程度をとることはできます。

西粟倉・森の学校では、植物生理や理論に基づいた栽培管理と日々のデータどりを欠かさず行うことで、美味しいいちごづくりに取り組んでいます。

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