農業初心者の材木屋がいちご栽培に参入するためにビニルハウス設備を低コストで自作してみた

西粟倉・森の学校では2021年9月からのいちご栽培に向けて準備を進めています。

2020年は来年10a(1,000㎡)での本格栽培に向け、テストハウス施工を自社で取り組みました。

わずか120㎡の小さなテストハウスですが、自分たちが頭を捻り汗を掻いて完成させた思い入れのあるハウスです。

本来であれば必要な設備や資材一式を導入すると200万円以上掛かるところを自作することで120万円程度に抑えることができました。

いちごテストハウス自作 前提条件

いちごテストハウスを自作するにあたって会社として設定した条件は以下でした。

  • 村内の120㎡の既存のビニルハウスをレンタル
  • 内装資機材(栽培ベッドや暖房機、乾燥機)等の設備は中古購入および自作。
  • テスト栽培の予算は120万円(収量を上げることが目的ではないため必要最低限の資材導入

2021年の本格栽培に向け、低コストでスタートしトライアル&エラーを繰り返して素早く経験値を積むことに注力しています。

いちごテストハウス 施工の流れ

いちごテストハウスの施工の流れは以下です。

  1. 地ならし/防草シート敷き
  2. いちご栽培ベンチの自作
  3. 中古暖房機の導入
  4. 自動潅水設備の自作
  5. CO₂(炭酸ガス)発生装置の導入
  6. 総工費まとめ

地ならし/防草シート敷き

まずは、地ならしからスタートです。

今回使用したビニルハウスはいちご栽培が始まる以前は夏野菜を栽培していました。

地面の高さ(レベル)を調整し、踏み固めて平面を作ります。

テストハウスの自作に乗り出したのは4月頃ですが、ハウスの中は温度も高いため、毎日大汗を掻きながら手を動かしました。

次は防草シート敷きです。防草シートには、白色マルチを敷きます。

白色のシートを敷くことで、光が反射して光合成量が増え、甘くて美味しいいちごを育てやすい環境をつくることができます。

いちご栽培ベンチの自作

いちごは高設ベンチで栽培します。

高設にすることで、屈まずに作業ができるため作業性が高いという特徴があります。

いちごの摘み取り体験を主軸にしたいちご栽培なので、お客さま自身も簡単に摘み取ることができることがポイントです。

本来であれば、鉄パイプを使用するのが一般的ですが、ぼくたち西粟倉・森の学校は材木屋です。

木材加工工場で余った材木から、高設の脚を作成して地面に打ち込みます。

栽培ベットに傾斜を付けることで排液が流れ落ちるようになります。

そのため、しっかりとレベルを取りながら栽培ベットの高さを調整していきます。

栽培ベットはイノチオアグリ社から購入した発砲ベッドを使用しています。

中古暖房機の導入

小さなハウスに新品の暖房機を入れようとすると、それだけで90万円近くも掛かってしまいます。

ある程度の品質のものを安く入手するため、中古品売買サービス・ジモティーで出品されていたネポン社のハウスカオンキ・HK2027型を岐阜の花卉栽培業者さんから20万円で譲り受けることができました。

設置費、メンテナンス、電気工事を含めると合計40万円で暖房機を導入しています。

岐阜県まで軽トラックで引き取りに伺い、オイルタンクも合わせてすることができました。

こちらは規模拡大時にも使用できる暖房容量のため、今後の活躍も期待できます。

自動潅水設備の自作

液肥混入式の自動潅水設備を導入すると100万円も掛かってしまいます。

そのまま導入するだけで予算オーバーになってしまうハウス栽培の鬼門が潅水設備です。

正確な管理をするならば液肥注入ポンプを利用して肥料濃度をコントロールしながら潅水をするのですが、今回はコスト優先の設備にします。

運が良いことに2000Lの原水タンクを使わせてもらえることになったので、液肥を直接つくり、そのままポンプで送ることで潅水設備を20万円(ポンプ、タイマー、フィルター等)で自作することに成功しました。

水垢まみれになりながら原水タンクの中を掃除したのは楽しい思い出です(笑)

CO₂発生装置の導入

さて、ここで質問です。

光合成に必要な要素とは?

答えは、二酸化炭素(CO₂)です。

小学校や中学校で習う内容ですが、いちご栽培において二酸化炭素はとても重要な要素です。

灯油炊きの発生装置一式を入れると70万円が掛かってしまいますが、炭酸ガスボンベを販売している水アセ社から購入することで20万円程度で抑えることができました。

栽培ベッドの中央部に黒いチューブがあり、定期的に炭酸ガスを発生させられるようになっています。

いちごテストハウス自作 総工費まとめ

合計でかかったおおよその費用は以下の通りになりました。

  1. 暖房機       40万円
  2. 潅水設備      20万円
  3. CO₂発生装置    20万円
  4. 電気工事      10万円
  5. 栽培ベンチ     25万円
  6. その他(マルチ等) 5万円

合計120万円

既存のビニルハウスを借りることができ、内装機材の導入のみで済んだこともありますが、十分な機材を入れて栽培をスタートすることができました。

いちごテストハウス自作の振り返り

いちごテストハウスDIYの振り返りは以下です。

良かった点

  • 必要最低限の資機材を入れることで低コストに抑えることができた
    最初から全てを自動化するのではなく、一部手動を取り入れています。具体的には、換気の巻き上げは手動。原水タンクへの水補給も手動です。なんでも最初から機械化するのではなく、手動を入れることで、温度変化、潅水使用量などの肌感覚が研ぎ澄まされます。また、面積に対する過剰スペックを避け、低コスト化につながります。どこまで機械化するかを明確にした上での機材選定をすることが大切です。
  • 木材を利用することで栽培ベンチのコストが下がった
    本来、鉄パイプを使用する点を自社加工の木材で内製化しコストを下げることができました。また、西粟倉・森の学校らしい、かわいいベンチが完成したので大満足です。

反省点・改善点

    • 灯油炊きファンヒーター型炭酸ガス発生器を購入すればもう少し安くなった
      液化炭酸ガスは、イニシャルコストが安く濃度制御ができる点が利点ではありますが、ランニングコストが高くなる傾向があります。小規模ハウス用の灯油炊きファンヒーター(3~10万程度)で購入することで、コストを抑えながら、CO₂施与をすることができます。(濃度制御できないのがデメリットです)
    • 防草シートの張り方
      防草シートの隅に隙間ができてしまい草が生えてしまいました。次回は隅を切って端につけることで草が生えてこないような施工を心掛けたいと思います。

これで、ようやく美味しいいちごを作るスタートラインに立つことができました。

西粟倉村を訪れてくださったお客さまに、西粟倉・森の学校の完熟いちごを食べていただける日を楽しみにしています。

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